サラリーマン大型二輪免許取得大作戦


第6話  〜突破!〜

教習所通いをはじめて、およそ1ヶ月。最近、街中を走るバイクに視線を奪われるようになった。
「かっこいいなー」というのが半分と、シフトチェンジのタイミングを観察しているのが半分。
今日も、教習所へ通う途中、横を走り抜けていったバイクを食い入るように見つめてしまった。
第1段階の見きわめということもあり、いつもにも増して視線がくぎ付けになる。

本日は見きわめ。できれば延長教習は受けたくない。不安と緊張の中、実車教習がスタート。
やはり肩に力が入っている。全てがぎこちない。
「曲線でのバランスのとり方」が復習項目で残っている。S字、クランク、スラロームは要注意。
とりあえず、おぼえたてのコースを走る。
坂道発進した直後、教官が一言、
「何か忘れてないかー!」
・・・しまった、クラクション鳴らすの忘れてた・・・。ヤバい・・・。いまさら鳴らしても遅いか・・・。
ちょっとブルーな気持ちでコースを1周。発着点に戻り、スタンドを立て、一息つく。
気のせいか、手足の震えを感じた。

気を取りなおして、再スタート。ちょっと緊張がほぐれてきた。
平常心を心がけ、コースを走っていく。坂道では、ちゃんとクラクションを鳴らした。発進は自分で言うのもなんだが、
素晴らしい出来だった。クランクも無事通過、S字もクリア、一本橋は、落ちることなく9秒台で通過、
スラロームでパイロンをはね飛ばす事もなかった。
「もしかして完璧なんちゃうん!?」と、思う一方で、ふっと頭をよぎる一抹の不安・・・。
ちょっとミスした時に限って、教官と目が合うのはなぜ?

1時間がこんなに長く感じたことはなかった。矢のように刺さる教官の視線、そしてプレッシャー・・・。
「落ちたかな・・・。」と、思いつつ、教習は終了。控え室で教官を待つ。
すぐに教官がやってきて一言、
「はい、お疲れ様でした。次へ進みましょう。」
へっ!?いいの?コース間違えたり、クラクション鳴らし忘れたりしたのに・・・。
『見きわめパス』の瞬間、ちょっと頭が混乱した。
「まだちょっとフラフラしてるところもあるから、2段階からはビシッといこうな!」
教官のあたたかい励ましの言葉を頂戴しつつ、教習生手帳を受取る。
そこには、ボールペンで書かれた『A』という文字・・・。こころなしか、輝いて見えた。

正直なところ、ホッとした。いや、全身から力が抜けていたかもしれない。
無駄な出費が押さえられただけでも十分価値がある。良かった、良かった。
次から第2段階。もっと厳しい世界が待っているだろうけど、今日は考えないでおこう。
帰り道の足どりは、いつもにも増して軽かった。